2018/07/29

霧に突っ込む

ワシントンDCに戻る道の遠くに、霧が高く立ち上っているのが見えた。夜半のことゆえ、霧の向こうは見えなかったが、車が次第に近づくと、霧と思ったベール状の空気は、煙だった。

 
煙は幾筋ものタテの線を表していた。タテ線はわたしの目の高さまで直列に並び、上の方でふんわりと曲げ落ちていた。
 
曲げ落ちる線を見て、ふと思った。
 
―――サーフィンの上で身をかがめて待つ大波みたいだ。大波は羊羹を切った断面みたいで好きだったけど、これは違う―――
 
刹那、目の前の煙の正体は多重衝突事故の現場だったと知った。
 
そこへ、突っ込んだ。
 
目が覚めた時、病院のベットでドクターがわたしの目をのぞき込んで言った。
「やあ、気が付いたね。あの事故で生きているとは驚いたよ。何か欲しいものはありますか?」
 
「アイスクリーム・・・・」                                 
「おや、目覚めてすぐにアイスクリームをご所望かね。元気で結構だ」 
 
違うんです、ドクター。
と言おうとしたが、口が重くなって言葉にしないまま再び眠りに落ちた。
あれはね、
アイスクリームをなめるように上体をそらせるんだよと教えてくれた泳ぎ(バタフライ)の達人が言ったとおりに、事故の衝撃で体が跳ね上がった時に上体をそらしただけなんだ。達人の言葉を言っただけなんだ。

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2018/07/28

ミャンマー“ロヒンギャ”について解題執筆

こんにちは、吉田鈴香です。

 
6月末、ミャンマーの元首相キンニュン大将が執筆した『ミャンマー西門の難題』に、解題を書いて出版しました。 
 
著者:キンニュン元ミャンマー国軍大将・元首相、
解題著者:千葉大学研究グループ
発行はAmazon
電子出版、オンデマンド出版
書店売りはしていません。
 
2年前から書き溜めていた論文の要約のつもりで書きました。私は編集にも加わりました。
 
“ロヒンギャ”は英国をはじめ欧米人が好む人権の概念によって国際社会の同情を勝ち取っていますが、現実は食糧戦争であり、英国の植民地支配の落とし物です。
 
どの国にも、隣り合う国がそれぞれ理解する国民の歴史があります。日本も隣国と植民地支配のことでは見解を異にしています。同じように、ミャンマーもチッタゴンから来た人たちについてバングラデシュと国際社会が訴える主張とは異なる見解を持っています。国の歴史観とはそういうものです。歴史観がアイデンティティを作ります。
 
それに重要な世界の動きがあります。
 
 
誰がムスリムを養うのか?
 
人口爆発のイスラム諸国には穀倉地帯はあまりありません。中央アジアの水が豊かな土地はソビエト時代に綿花畑など、食糧以外の換金作物の畑にされてしまいました。エジプトやシリア、トルコ、イランにかつてあった穀倉地帯はやせ細り、戦乱で土地は荒れ、人口増加が倍々ゲームで増えるムスリムを養えるだけの土地はありません。ムスリムの人口圧力がアセアン諸国へと押し寄せていることに、思いを至らせてほしいものです。
 
そんな理解が進むことを、望みます。

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2017/11/03

ロヒンギャ対応にみる現場と方針の齟齬

こんにちは、吉田鈴香です。

 
前回ロヒンギャについて書きました。ロヒンギャ自身が土地の奪取を真の目的に行動しているのでは、という見方です。
 
ロヒンギャについてミャンマー政府は虐殺命令を出しているか、調べましたが、出てきませんでした。IDカードの所持・不所持を調べるようにという作戦はこれまで出しています。アウンサンスーチー国家顧問が、ロヒンギャが住むラカイン州の開発を進める国家開発計画を立て、。2017年から開始する予定にしていました。大きな事件後の10月、政府の予算では全く不足しているから民間資金を募りました。「こんなに手厚くしている」と訴えたい国の意図が見えます。
では、なぜIDカード不所持の人間を武器をもって追い出す事態になったのか。
 
IDカードを持っていない人間を追い出せ、とボンヤリとした方針だったからではないか、と推察します。不所持の人間をどうするか、詳細な行動計画があったのか、シュミレーションと訓練は事前にあったのか、疑問です。ロヒンギャは自国民ではない、不法居民だ、と国家方針があったとして、それを徹底して現場に卸すとき、どんな事態が起きるかを事前にシュミレーションして、現場に出る軍人たちに徹底しておかねばなりません。それが不十分だったのではないか、という予測をしています。
 
上部と現場とのかい離はどの国でもいつの時代にもあります。日本にもあります。憲法9条の平和の精神と安全保障の脅威にさらされる現場とのかい離、被災者支援の理念と被災地の復興とのかい離、原発廃止のエネルギー政策と原発処理の長い時間と新たな安定したエネルギーの確保とのかい離、などなど。こういうとき、各分野の専門知識が必要になります。分野の専門家が地域の専門家を上回る役割を果たすのです。ミャンマー国軍に民間人とのコミュニケーションを教示してくれる専門家、いますか? いません。
 
民主主義の実現には、多くの分野で知恵を提供してくれる民間の人材が必要です。政府の役割は理念と大きな方針を決定すること。実行は政府と民間、両方が必要なのです。

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2017/10/14

ロヒンギャの狙いは土地と食料

こんにちは、吉田鈴香です。

1990年代半ばころから脚光を浴びるようになってきたロヒンギャの存在について、今日は書きたいと思います。         
ロヒンギャがミャンマーの歴史に現れたのは19世紀半ば。統治国、英国がラカイン州北部で米作を進めるために労働力を必要としたからです。コメを作るに必要なのは、土地、水、労働力です。土地と水は動かせないけど、労働力は移動によって手に入れることができる。というわけで、英国は労働力をチッタゴンあたりから移動させた。作られたコメはスエズ運河に乗せて地中海沿岸、中東、ヨーロッパへと運ばれ、英国は利益を得た。英国にとって、ラカイン州もベンガり人も、土地も水も人間も利益を生む資源でした。
 
ですが、第二次世界大戦が始まるころにはラカイン州でベンガり人(のちにロヒンギャと呼ばれる)はラカイン人から恨まれるようになってしまった。なぜなら、もともとの住民であるラカイン人を南に追い出して、土地を占有してしまった方です。パキスタン政府の上部から、住む土地がほしかったら、自分たちでコメのなる土地を勝ち取れ、と指令があったとの説があります。このあたりの話は複雑になるので、省きます。
 
バングラデシュが東パキスタンという名前から独自の国名になるころ、パキスタンとの戦争により多数の死者が発生し、危険を回避するためにミャンマーへと逃げ込む、つまり、流入しました。建国以来まともに国境警備も何もないミャンマーは、多少の賄賂さえもらえば入国させたため、ロヒンギャはかなりの数の人口になってしまった。そこで、60年代末から70年代にかけて大規模な作戦を4回、講じました。IDカードを所有しているかどうかのチェックです。持っていないものは不法居民として追い出したわけです。とはいえ、19世紀にいついてしまった人たちの子孫など、ラカインで生まれた人たちもいるので、全員を追い出すことはありませんでした。
 
コメは人口を養います。小麦よりも人口が増える傾向がある。ラカインの米作地は生産力を衰えさせることなく、増える人口をもまた養い続けた。また、それを期待して、バングラデシュから続々と人は流入し続けました。
1990年代半ばころから、人道被害を理由に、国連難民高等弁務官事務所UNHCRなどがラカイン州で技術訓練などの事業を行い始め、徐々にロヒンギャを勇気づけ、彼らは経済力を少しずつ蓄えるようになっていきました。ミャンマー国内の混乱があるとどっと流入が増える。
こうして、大きな騒動では2012年夏、2016年9月、2017年8月25日、など起きてしまった。近年に入ってからの騒動は、ロケットランチャーを構えたロヒンギャの写真が報道されるようになって、はっきりわかるに至りました。ロヒンギャは被害者の面だけではなく、加害者の面を持っていると。サウジアラビアへ難民として出ていき、そこで訓練を受けてきたロヒンギャが、もどってきて、逆襲に出たのです。
9月19日のアウンサンスーチー氏の演説には、ロヒンギャの50%以上の人たちは通常とおり暮らしている、他方でバングラデシュに逃げ込んだ人達がいる、この違いはどこからきているのか自分は知りたい、という言葉がありました。
 
なるほど、そうなんですね、アウンサンスーチー氏は何か別の意図が騒動の裏にはある、それを察してくれ、と言いたかったのです。報道はすべてを表しているわけではありません。
 
ロヒンギャの狙いは、土地にある。ミャンマー独立直後に申し込まれた、土地をベンガり人に、という要求が今も生きていた。コメの豊作が期待できる土地をミャンマーから奪取することにあるのでは?
 
考えてみると、イスラム教徒が大勢を占める国で、穀倉地帯はどれくらいあるでしょう。中央アジアくらいです。それも、ソ連時代に綿花栽培に転作させられたりして、大規模に採れません。ウクライナは穀倉地帯ですが、そこはイスラム教の国ではありません。シリアも以前は穀倉地帯がありましたが、地球温暖化のせいなのか、それはなくなってしまった。インドネシアもありますが、インドネシア自体が2億人以上の人口(3億人に近いという説もあり)を抱え、ロヒンギャを難民として入れる気はない国家です。アセアン諸国が狙われ始めている。モンスーン気候でコメが採れ、土地があるアセアンを、西から次第にイスラム教徒が狙い始めているのでは?
 
人口爆発はどのイスラム教徒の国々でも大問題です。人口爆発するイスラム教徒を、だれが養うのか。どの国が面倒を見るのか。1995年ころに話題になった『だれが中国を養うのか』(レスター・R・ブラウン著)になぞらえて、思います。だれがイスラム教徒を養うのか、と。
 
自分たちの食料は自分たちで得よ、はどこでも当たり前です。しかし、イスラム教徒に限っては、治安とガバナンスが荒れて安住できる土地はなくなり、人口だけが増えてしまったけれども、ふと東を見ると、安住できる米作地はアセアンにある。
 
食料は手に入れなくてはならない生活資源です。そしてその食料を継続的に供給する土地は是が非でもほしい資源です。北ラカイン州は、西から忍び寄ってきた食料欲しさの大規模な集団の活躍の場になってしまった。これが、私が読む、ロヒンギャの背景です。
(様々な国際機関の調査ペーパー、ミャンマーの元首相の著書を読んでの、私の分析です)

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2017/02/06

目に見えない脅威を主張するトランプさん

こんにちは、吉田鈴香です。

                                            
米国の新大統領トランプさんが就任早々に7か国の国民を入国禁止したことで、ずいぶんと批判されています。人種偏見だと。論拠を示していないので、そのように思われても仕方ない側面はあります。また、専門家でもない人が戦略家という肩書で側近になっていることが、ますます怪しげだという印象を与えてます。
 
私は、国家と国民共通の、目に見える脅威に対してはその場に居合わせることが多い民と国家とは連携できると思っています。それがゆえに、前回ここで、民と国家との安全保障の協働の形が、もしかするとトランプ大統領のそれと近いのかも、という読みを書きました。しかし、人を特定せず、国籍を特定しての脅威を主張するトランプさんの主張を見ると、私の推測は間違っていたようです。特定の国家が脅威を撒いてるという場合には、入国拒否は手段になりえますが、非国家主体が主役の脅威というときには具体的な事由をもとに、暴力の源であることを明かさねば法的手段に訴えることはできません。国籍を理由にはできません。人物を特定せねばなりません。
 
トランプ大統領の真意がわからないために、メディアも米国議会も、国際社会全体もなんだか振り回されているようで、釈然としない疑問がわいてきます。私もしばらく状況を見ながら新大統領の真意を探ってみたいと思います。

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2017/01/19

国境地帯に行ってわかる、安全保障も国家と民の協働へ

こんにちは、吉田鈴香です。

国境地帯を歩くのが、仕事みたいになってきた私です。 
                                                                 
 
年末年始、中国との領海争いをしている南沙諸島へ行ってきました。フィリピンです。他の国同様、国境地帯の警備予算を十分に振り向けられないようでした。船も足りない、人員もいない。そこで、漁民、地元民、観光船の操縦士など、海域で仕事をする人たちが協力して情報を海上警備に提供していました。情報には、違法漁船の給油給水に手を貸す在フィリピン中国人についても、含んでいます。
 
セキュリティの原始の形を見た思いでした。国家の形がまだ十分に整っていなかった時代、都市国家が隆盛だった時代、軍人も民間人もなく、みんなで共同で領地を守っていました。住民共通して警戒警報を理解する民力があればこそ、可能な国家安全保障の形です。
 
税金を使って国境を守る人を雇う、育成する、武器兵器を整える、という形は崩れていたのです。いえ、途上国では前から整っていなかった、と言えるかもしれません。移動の自由が世界的に認められ、それを可能にするインフラが整ったために、「あそこはわが国の文化が及んでいる地域だから我が国のものだ」と、突然言い出す国が生まれてきました。
 
人が感じる国土の範囲は、インフラの発達により狭くなってきました。地図上は同じでも、圧倒的に近接して感じられるのです。インフラの発達が、今までは放っておいて問題がなかった地域を管理する必要を生んでいます。フィリピンだけではなく、アセアンはどの国も皆、同じ悩みを抱えています。
 
考えてみますと、セキュリティみたいな、即応力が極めて大事な分野では、国家よりも民の出番が時には大事になります。かつての都市国家のように、軍も民も一致協力して守る時代に入ってきたのだなと、フィリピンだけではなく、数年間いくつかの国境地帯を歩いてみて実感します。
 
 
トランプ新大統領の主張も、同じことなのかもしれません。メキシコとの国境線を民との協力で守る必要があると、訴えているのだなと、見えてきました。
 
明日のトランプ新大統領の演説が楽しみです。

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2016/12/03

「灰色人間がスパイ」と言い切った大学教授

こんにちは、吉田鈴香です。

                                           
今週半ば、あるテレビ番組で、ロシアの美人スパイについて放映していました。美貌を武器に、大統領が握る核の情報を収集するよう命を受けた女性が、どんな活動をしたか、という内容でした。
 
IT企業の経営者となって米国に住む、SNSを駆使して行動を世間に公表する、着飾ってパーティに出かけて接触する、など世間の耳目を引く行動をとっていたそうです。
 
それを、日本のある大学教授が、「スパイにあるまじき行い」「スパイと全く違う行動をとった、意表を突く行動だ」と、さも驚いたように言っていました。この方、本当にそう思っているなら、東西冷戦時代、あるいは、20世紀初頭の考えです。
 
スパイが灰色でよかったのは、第一グループの人口が少なく、容易に人物を特定できた時代のことです。その背後でさりげなく、立ち聞きするだけで重要な情報が手に入った。あるいは、どこにどんな情報が隠されているかが分かった。また、スモールワールドに入っていく道筋さえたてられれば、ターゲットは容易に特定できた時代の話です。人口が増え、必要な情報を手に入れるには、自分は灰色ではなく、磁石になる必要があります。
 
磁石とは、砂と砂鉄が混じっている砂丘で磁石を使って砂鉄を集めるがごとく、自分に人々の耳目が集まるよう目立つこと。自分の気を引こうと人が寄ってくるからです。次に、誰がどんな情報を持っているかを、特定すること。個別の関係を構築して、情報を吸い出すことができるからです。少なくとも、この二つが必要です。このスパイの場合は、それが美貌だった、という筋立てでした。そして、パーティで人物を探したとか。
 
 
意外なことに、米国人も欧州人も、服装はつつましいです。実務家は間違いなく、派手ないで立ちの人を警戒します。極めて重要な情報を持つ特定人物は、特に、そういう女性に簡単に心を惹かれません。美しいというだけで、大事なことを話したのでしょうか。本当にハニートラップができたのかしら?
 
現代は、みんなが情報発信をするので、誰が誰やらわかりにくい。知っていることを我も我もと、SNSで言ってくれる。パーティに行けば、みんなが偉そうに見える。否、皆が等しく何も知らないように見える。ロシアの美人スパイは、人相、風体を見極めて接触したと、テレビでは言っていましたが、それはそうでしょう。私だって、それは思いつきます。
 
何より、彼女には、情報を得るための基礎的知識はあったのかな?
 
専門知識が非常に発達した現在、収集すべき情報は細分化されています。どんな情報を得るべきか、具体的に情報を得るには、スパイはある程度の知識を持たねばなりません。テレビではそんな具体的なことを、まあ、いうわけはないので、「核に関する情報」ということでごまかしていましたが、武器の売買を行っている人から得られる情報て、どれくらいの精度の、何だったのか。気になります。アンナ・チャップマンさんがこの専門知識を短期間に覚え、役割を果たしていたとするなら、大変な頭脳です。
 
もし、私が情報を握る側の人間なら、、美しさよりも、会話の楽しさとか、自分の知らないことを知っている人(女性)に心を惹かれることでしょう。ロシアで何が進んでいるのか、知りたいですもの。そして、心の柔らかな人なら、話そうという気持ちになったことでしょう。アンナ・チャップマンさんの瞳は美しいですが、それ以外のつくりはそれほど目立つものではありません。話術こそ、本当は優れていたのでは?もし、本当に重要な情報を入手できていたとするならば。
 
ベストな情報取集の方法とは、一緒に何かをすることです。共同事業体を編成して何か特定のことをする。美貌は一時の価値でしかありません。継続的に、しかも深いところの情報を得るには、現実に何か、目に見えることを転がす作業を共にする機会を作ることです。
 
それにしても、スパイを「灰色の人間」と今でも思い込んでいる日本のセンセ、人口と情報の関係を学んだほうがいいです。

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2016/11/20

もしも大統領の側近がただの占い師だったら

こんにちは、吉田鈴香です。

 
韓国の朴大統領が宗教家の娘さんに国家の方針を決めるにあたって相談し、スピーチ原稿に手を入れてもらい、着る服を決めてもらい、財団つくりとその資金の流用を許した、という容疑をかけられ、4週連続で週末には大規模な退陣要求集会が行われています。昨日は20万人規模の集会が複数個所であったとか。
 
もしも、このチェ・ナントカさんが、側近に姿を見せず、おしゃれもしない、ただの占い師だったら・・・・韓国は占い師の言いなりで動いていたことでしょう。
 
占い師は言葉だけで政治を動かせる絶大な権力者です。それなのに、身の程を超えて、お金に手を出すから司法の手が伸びるわけで、これが「瞑想していた」などと大統領に言わせていたなら、側近も手を出せなかったことでしょう。知り合いが権力者になったからと、自分も目に見える権力、すなわちお金という目に見えるものの入手にこだわったのがいけなかったのです。ここが、韓国が韓国たる所以、と言えます。
 
本当に政治を動かせる、世の中の決め事をする権限を持っている人とは、どのような人か、考えますと、表舞台で権力を持つ人を心理面で操れる人かなと思います。決して表に出ず、権力者の心の隙間をとらえて、屏風の裏で権力者を励まし、助言をし、周囲の動きを注意深く見ている人です。市民社会活動家など非政府組織の人が政治を動かす人になるかなと思ったことがありましたが、違います。なぜなら、市民運動家は人々を扇動(先導)するのに資金がいるのでプロパガンダを発しなくてはいけません。足代(資金)を常にプールする必要も生じてきます。表に出て人を引き付ける必要が出てきます。すると、大衆から揶揄、罵倒される危険性が生まれます。そんな声に耳を塞いでいると資金徴収という大事な活動ができなくなります。扇動家は持ちこたえられません。つまり、他人の資金と他人の名声で仕事ができる人、すなわち、ただの占い師がリスクなく政治を操れる、というわけです。
 
本当の影の権力者は、身を慎んでいるものです。
 
追伸
まったく個人的な感想を書きます。
朴大統領は、全身から発せられるオーラが少ないですね。苦しんでいる、考えている、こぶしを握って政治をしている、という感じに見えません。話を聞いてくれる雰囲気でもなく、腹をさらしてぶつかったことがある風でもない。なんとなく、ひら~ぬら~りとしていて、肝っ玉も人情も攻撃力もどれもない。つかみどころのない風情の方だなと、映像で見る範囲ですが個人的な印象を持っています。意外に芯の弱い人なのかもしれません。

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2016/11/19

第一グループ(エスタブリッシュメント)の力の壁を崩す民主主義

こんにちは、吉田鈴香です。

                                                    
米国で新たな大統領としてドナルド・トランプさんが選ばれました。その理由について、報道では「富の偏在に対する人々の不満」「クリントン氏の人間性への不信感」とか、言われています。
 
私はかねてからここでも書いてきたように、エスタブリッシュメントの強固な壁を破ろうとする人々の勢いが強かっただけのことと持っています。エスタブリッシュメントを私は「第一グループ」とそれに続く「第二グループ」と称しています。第一グループはその中の一人一人の身内のことも、資産、社会的影響力、職業などすべてを知っており、それがゆえに嘘をつかない正直者であらねばならんとする、規範に基づいて行動しています。第二グループはそれに続かんと、第一グループのほころびを狙ったり、おこぼれにあずかろうとしたりする人たちです。第一グループを直にその目で見る機会はあり、低姿勢を貫いていれば、そのチャンスに恵まれてきました。この傾向は世界各地、どこでも同じです。
 
しかし、人口が世界的に増え、教育程度も高まり、ビジネスチャンスが世界中に広まってきている現在、第一グループをテレビの画面でしか見ることができない人が99%になりました。第一グループが「決める人」に収まり、それ以外の人間は「従う人」「税を納める人」に甘んじなければならないとは、人に格差をつける行為だ、と思うわけです。こんなふうに、人口増加とともに規範を超えようとする人間が増えてきた。特に、軍事が絡むと顕著に差が表れてきます。第一グループが行う方針決定を実践で表すのは第3グループ以下の人々ですから、災いを身に被るのは第3グループ以下の人々になる一方、意思決定者は悲しみの感情からは遠い。
 
アラブ諸国やアフリカでは今も、第一グループの力が政治、経済、社会のすべてにおいて強力で、「社会的統治力」を発揮していますが、これも時間の問題で、壁は破られつつあります。「アラブの春」がそれです。
 
アラブとアフリカに先んじて、第一グループから権力奪還、勢力の塗り替えと権力層の拡大を果たしてきたのが、現在の先進国です。
 
フランス革命、ロシア革命、明治維新。それらを現場で見聞きして、広く世間に伝えてきたのが、メディアです。トルストイは第二グループに属していながらメディアを演じた人です。メディアは権力構造を転換する際の推進力だったのです。
そのメディア自身が、既存の権力構造を「是」として、第三グループ以下に身を置く人を「下品」「ありえない」と決めつけていた。メディアこそ、実は、本来の役割である権力構造の転換と開かれた政治(意思決定者とそれを追認して実行する国民、双方の意思共有をおこなうあり方)の推進を拒んだ。このことを反省せねばならないのです。しかし、メディアは自分たちに力があると思い込んでいる。わかっていない。メディアはただ「場」なのに、です。
 
ジャーナリストはもうこの世に不要なものだ。本当のジャーナリストは自ら消えるべし。
 
そう思って数年経ちました。私の読みは、本当に正しかったのだと、アメリカのジャーナリストたちを見て、改めて思いました。民主主義とは、民が自分たちで権力構造を破り構築する繰り返しを認める仕組みなのです。トランプさんはこんな世の中の自浄作用というか構造転換を果たしてくれた、民主主義の大恩人です。

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2016/10/18

芸術家の呻吟

こんにちは、吉田鈴香です。

週末、現代アートの作家と会いました。
 
鮮烈なデビューを果たしてから八年ほどたち、毎年大なり小なりの個展を開いている女性アーティストです。昨年は大きな賞を受賞しているのですが、顧客は少ない。ご本人も少ししぼんで見えました。
 
思い当たることがありました。                                   
4年ほど前、二人の女性アーティストに、「屏風を作ってみたら」と勧めました。
 
一人は大成功し、今や一回の個展で千万円近くを売り上げる売れっ子になりました。
もう一人の彼女も屏風に仕立てた版画を作りました。しかし、哲学と美術史の裏付けを好む彼女は世間受けする作品を良しとせず、大ブレークとはなりませんでした。
 
彼女と話しました。
 
あなたの作品は一作でほかの人の百作以上の力があるのだから、爆発してください。
 
明るい栗色に染めた頭を、コクリと倒した時、後ろ頭から白髪が1本飛び出して、かすかに揺れました。芸術家の呻吟が白い一筋となって私に振り向けられた、と思いました。
 
白ひと筋  照葉の髪出で  苦を語る

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